古九谷を追う&古九谷を残す

週1くらいの更新になります

「古九谷」の祖 鷹峰と青木木米

私:さてここからは「鷹峰」が「古九谷」の祖であることを証明しよう。地元(加賀藩、大聖寺藩)だけの力では「古九谷」はできなかったのだ。 N:鷹峰が「古九谷」をつくったのは京都ですか? 加賀ですか? 私:どちらでもだろう。 N:鷹峰は利政人脈ですか…

江戸期を通して九谷は伊万里に一度も勝てなかった 私:さらに伊万里と九谷を対比させれば、江戸期を通して九谷は一度も伊万里に勝てなかった。宮中は「古九谷」にある「武家」的なところを嫌い、伊万里を好んだ。いわゆる御用達窯は九谷ではなく伊万里だった…

利常の「古九谷」はWスタンダード

私:いよいよ利常だ。なんと言っても「古九谷」のスポンサーだからさ。利常の「古九谷」はWスタンダードだ。表は東インド会社の意向で、しかし、裏は利常の意向だ。 N:東インド会社の意向とは? 私:九谷は伊万里のコピー基地の話さ。しかし、利常は東イン…

東インド会社のコピー基地(1) 伊万里

私:では、東インド会社の視点に立つと、鍋島(伊万里)や前田(九谷)はどう映っていたのだろうか? まずは鍋島から。出島の管理貿易で、鍋島は潤っていた。財力にも問題はないし、中国人、朝鮮人もいる。地理的にも便利である。 N:ところで鍋島って関ヶ原…

東インド会社主導説 角福は中国のブランド

私:作蔵君、もうそろそろグロージングに入ろう。「古九谷」のメインプレーヤーは利政と利常と利治。そして鷹峰と東インド会社だったよね。 N:東インド会社と利政人脈の「鷹峰」は意外な切り口でした。 私:開窯で説明した通り、「古九谷」は利政(鷹峰)が…

大聖寺藩のもう一つの「親戚説」 吉良上野介と浅野内匠頭 私:上杉定勝には4女がいる。名を富姫という。あの吉良上野介の妻だ。 N:え! 私:大聖寺藩は吉良ときわめて近い親戚だろ。 N:あれ? 吉良と親戚で、大石のリクルートとは? 先生、話、盛りすぎで…

大聖寺藩の「親戚説」 「古九谷」の技術が流入する

私:さて今度の話は作蔵君もアッと驚くだろうな。大聖寺藩はあの「大石内蔵助」をリクルートしていたんだ。 N:え! 私:大聖寺藩の親戚を語ろう。まず石川県九谷焼美術館提唱の「親戚説」から。初代佐賀藩主鍋島勝茂の長女は市姫で、米沢藩主上杉定勝に嫁ぎ…

大聖寺藩も加賀藩も「シリコンバレー」

私:さて今度は加賀藩・大聖寺藩のリクルートを語ろう。当時、大聖寺藩にも加賀藩にも、信長死後、関ヶ原後、そして大坂の陣後に、一流の人材が一気に集まってきた。 (a)第1期 信長死後 私:当時、前田藩は24万石から83万石へと高度成長期を迎えている。有…

大聖寺藩も加賀藩も「シリコンバレー」

私:さて今度は加賀藩・大聖寺藩のリクルートを語ろう。当時、大聖寺藩にも加賀藩にも、信長死後、関ヶ原後、そして大坂の陣後に、一流の人材が一気に集まってきた。 (a)第1期 信長死後 私:当時、前田藩は24万石から83万石へと高度成長期を迎えている。有…

利治の「古九谷」

N:ここまでの話で、利治の開窯も閉窯も明らかになりましたが、では、本藩の下請けから脱却した利治の独自の「古九谷」構想とはどのようなものだったのでしょうか? 私:利治は「古九谷」を売ろうとした。殖産興業としての「古九谷」、つまり産業としての「…

「古九谷」の閉窯時期

私:ところで閉窯は、利常・利治親子の死の年と考えている。利常は1658年、利治は1660年だ。 N:立藩から20年あまりですね。つまり「古九谷」の窯は20年間のみ稼働したのですね。 私:スポンサー(利常と利治)が死ねば事業は終わりだ。 古九谷を追う…

(2)承応2年(1653)説

私:利治は承応2年に開窯する。利治の開窯を祝して「承応弐歳」銘をいれた。 N:承応2年開窯の根拠は? 私:承応2年に大聖寺藩から加賀藩に人員移動があった。24人、総禄高1万5000石だ。江戸期を通じてこれほどの人員移動はない。 N:経費削減ですか?。…

前田利常が九谷で作らせた「古九谷」

私:ここからは大きく話題を変え、歴史的なアプローチで「古九谷」に迫ろう。 N:え! もう芸術的なアプローチは終わりですか? もう少し……。 私:では、歴史的なアプローチを終えてから、締めっくくりにふたたび芸術的なアプローチから「古九谷」に迫るね。…

「古九谷」の開窯時期(1)鍋島藩キリシタン陶工追放と大聖寺藩立藩

私:今度は「古九谷」の開窯と閉窯を語ろう。「古九谷」は、開窯時期も閉窯時期も特定されていない。従来の説では明暦元年(1655)開窯、その後50年間制作して、突然閉窯とされてきた。 N:先生の見解は? 私:開窯は4期に分かれ、1期利政、2期東インド…

家光を意識した「古九谷」

私:話は変わるが、「古九谷」は家光を意識している。利常は家光にないものをしっかりと認識していた。家康も、利家同様、朝鮮に渡海していない。だから朝鮮陶工を奪えず、そのため陶磁器制作の技術がない。だから「古九谷」をつくれば、家光に勝てる! 利常…

やきもの戦争 利家は敗北した

私:作蔵君、やきもの戦争を知ってるかい? 利家は、秀吉の世でも、やきもの戦争に敗北した。利家は朝鮮に渡海できなかったのだ。 N:西国大名は朝鮮人を何人連れ帰ったのですか? 私:7万人だな。陶工が一番多いが、農民、活版工、学者までもいた。 N:そ…

石川県立美術館から利治の名前が消えた

私:ところで県美から前田利治(初代大聖寺藩主・利常3男)の名前が消えたな。県美では利常、九谷焼美術館では利治になっている。 N:2016年九谷に「九谷焼開祖 前田利治公碑」が建立されましたよね。それなのに県美はなぜ利治より利常を選ぶのでしょう…

前田利常が九谷で作らせた「古九谷」

私:ここからは大きく話題を変え、歴史的なアプローチで「古九谷」に迫ろう。 N:え! もう芸術的なアプローチは終わりですか? もう少し……。 私:では、歴史的なアプローチを終えてから、締めっくくりにふたたび芸術的なアプローチから「古九谷」に迫るね。…

(4)「重文」は「古九谷」No.1との評価が高い

N:疑問に感じていることがあります。率直に訊きます。「重文」の「牡丹」は「古九谷」No.1との評価でしょう? しかし「色のハーモニー」と「色のヴァルール」の観点からみると、そうではないのでしょう? いったい何を基準にして「古九谷」をみればいいので…

二つの「牡丹」(3)3次元(立体)化

私:作蔵君、これから始まるこの話が「古九谷」の話の山場だ。さて「東博」の「牡丹」は画面から緊張感が漂う。それは武士の線から来ているのだろうか? しかし、それだけではない気がする。 N:何からきていると? 私:点や線だけではないし、面だけでもな…

(2)蝶は飛んでいるか?

私:ところで武腰潤氏による「東博」の「牡丹」の作品解説があった。この作品をみたことがきっかけとなり、「古九谷」作家になったとの驚きの告白があった。まず線の話があり、職人の線ではなく画家の線(武士の線)だとの指摘がある。その後、蝶の「位置」…

最後に問う 二つの「牡丹」(1)ハーモニーとヴァルール

私:さてここからは2枚の牡丹を描いた「古九谷」きっての大名品を対比させながら話を進めよう。「亀甲牡丹蝶文大皿」(重文・「古九谷」No.1との評価もある)と「牡丹蝶文捻大皿」(東京国立博物館。以下東博)。 N:「色のハーモニー」と「色のヴァルール」…

(3)鷹峰(琳派)

私:ところで、先ごろ、東京オリンピック・パラリンピックの記念硬貨で「風神雷神図」が話題になった。また俵屋宗達・尾形光琳・酒井抱一「風神雷神図屏風」3作品が一堂に会する展覧会も人気だ。 N:宗達・光琳の2作品はみました。 私:光琳の画法は宗達を…

(2)牡丹

私:斎藤菊太郎(古九谷新論)によれば、九谷の画工は『八種画譜』の使い方が上手という。「色絵古九谷の花鳥図は、初期柿右衛門の赤絵花鳥図が焼かれた年次からはやや遅れて、雁行して焼成されたであろうことは想像に難くありません。色絵古九谷の赤絵技法…

『八種画譜』から「古九谷」へと至る道(1) 素描

私:いよいよ話は佳境にはいってきたな。『八種画譜』から「古九谷」へと至る道についてまとめて話そうとするか。テーマは『八種画譜』から着想を得て、「古九谷」の名品がつくれるのか?、だ。 N:『八種画譜』って何ですか? 私:中国でできた絵手本だ。「…

「古九谷」の縁

私:さて今度は「古九谷」の縁の話をしよう。そもそも「古九谷」には総絵のものと縁のあるものとがある。縁のある皿は、江戸時代の流行りで、とても人気があり、歌人が一首歌いたくなる中国風の「古九谷」が好まれた。 N:作家はどういう場合に縁をつけるの…

「古九谷」の背景の文様

私:次は背景の文様に移ろう。「古九谷」には一面を黄色や緑色で塗り埋めた作品がある。それを「青手(塗埋手)」という。それらには必ず背景に文様がある。文様がなければ作品が締まらない。 N:文様? 私:地文様ともいう。「青手(塗埋手)」には目が喜ぶ…

「古九谷」の生地の形状

私:話を色から形に移そう。形のバリエーションは豊富でじつにたのしい。 N:どんな形のものがあるのですか? 私:ふくべ(ひょうたん型)。おめでたい形とされ、秀吉の馬印の千成瓢箪が有名だが、そもそもひょうたんには種が多く、子孫繁栄の意味がある。他…

「古九谷」の生地の色

私:次は「古九谷」の生地を語ろう。「古九谷」の生地は白っぽいし、青っぽいし、鼠っぽい。つまり真っ白ではない。 N:なんともいえない生地の色です。 私:その色の生地を「鼠生地」と呼ぶ。鼠生地は「古九谷」の釉薬に深みや透明感を与えている。その鼠生…

「色のハーモニー」と「色のヴァルール」

私:そして硲伊之助によれば、「古九谷」(色絵磁器)の2条件は「ハーモニー」と「ヴァルール」だ。ハーモニーは「色のハーモニー(色彩調和)」と使う。またヴァルールは「色のヴァルール(色彩遠近法)」と使う。 N:色にも遠近法があるのですか? 私:色…