古九谷を追う&古九谷を残す

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鉄砲の誤解(3)鉄砲が宗教に与えた影響

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私:ところで、作蔵君、信長は鉄砲集団の指導を宣教師ヴァリニャーノが連れてきた外国人に任せていたことを知っているかい? ところで、鉄砲は戦争のありようを変えたが、鉄砲の影響が宗教面から語られることは少ないね。しかしひとの死因が鉄砲で変化している。弓矢と鉄砲では殺傷能力がまったくちがう。50メートル離れていても鉄砲の餌食になり、隣人がふいに死ぬ。鉄砲伝来以前は、一般兵は負傷しても死ぬことはまれだったのに。

N:そうなの?

私:狙うは大将首、指揮官首。一般兵の首などは恩賞の対象ではなかったからな。

N:一般兵同士では命のやり取りはしないのですか?

私:そう。だから一般兵は死ぬことはまれだった。鉄砲伝来以後は一般兵は鉄砲の矢面に立つ。それゆえ戦争に出れば、命の保障はない。死にゆく兵士の数は多い……。

N:一般兵(農民)はたまったもんじゃありませんね。鉄砲は日本人の死生観に決定的な影響を与えましたね。

私:惨たらしい死者の現実から目を背け、あの世への往生を唱えるだけの仏教。仏教への疑問をあらゆる人が抱いた。

N:あの世での極楽よりも……。

 

●古九谷を追う 加賀は信長・利休の理想郷であったのか(幻冬舎)抜粋

私:鉄砲による戦争の悲惨さがキリスト教の広がりに輪をかけた。鉄砲こそが悪魔であり、鉄砲こそが「神の化身」だったろう。鉄砲伝来でキリスト教が仏教に、当時は、完全に勝利したのだ。

 

●古九谷を追う 加賀は信長・利休の理想郷であったのか(幻冬舎)抜粋