フロイス（４）冨の源泉としての茶道 茶器は密談の権利
私：茶道。
N：茶道が資本主義ですか？
私：ホームレスからのし上がった織田軍団を「文明化」するために信長は茶道でナイキ
戦略を使う。ナイキ戦略とはトップアスリートがもつ価値観（足利将軍家）をナイキが一般のスポーツ愛好者（織田軍団）に広める戦略だがね。
N：モーニング文化は名古屋が発祥ですが、それも信長の影響だったりして……。ところでこの頃の信長の茶の師匠は誰ですか？
私：傅役の平手政秀だな。彼は尾張随一の文化人でもあったからな。さて信長は茶道から宗教（精神）的なものを抜き去る。そして「茶道」から「茶器」に関心を寄せるんだ。「文化財」の価値に気づいた信長は「名物狩り」に走る。そして茶道で家臣団を統制し始める。茶会を開く権利は勝家、秀吉、光秀、織田信忠（信長嫡男）、丹羽長秀、計５名にしか与えず。
私：利休は信長に自身の未来を賭けた。茶会のために茶器を「買い占める」利休は、まるで現代の「投資家」だ。われわれが知る利休ではない。
N：信長には茶会は名品の鑑賞会や取引の場なのですね。
私：そして信長は茶器を領土にするパラダイムシフト（茶器＞領土。名物＞一国一城）を起こす。領土は品切れ状態なので、論功行賞も信長は貨幣的価値で処理したのだ。
N：信長のパラダイムシフトは茶器が一国一城に値するですよね？ しかし、これ、おかしくないですか？ 一益は信長から茶会を開く権利も許されていないのですよ。それなのに一国一城より茶器がいいと……。私なら絶対一国一城です。
私：利休は「死の商人」なのだ。密室での「茶室外交」で、秘密情報をひとり得ていたのだ。「次はいつ、どこを攻めるか？ 武器、食料の調達は？」。そういう情報は喉から手が出るほど欲しい。よい茶器を持てば、より重要人物と茶室で「密談が出来る権利」が得られる。つまり茶器は密談の権利なのだ。
N：なるほどそういうことかあ。
私：それにな、信長が認めているわけだろ。お札だって、われわれも紙をありがたがっているわけで……。
N：なるほど。お札は国が保証し、茶器は信長が保証するというわけですね。ところで利家と茶器の話は何かありませんかね？
私：利家は利長に、利長は利常に「富士茄子」を見せて「古九谷」の構想を語る。
N：富士茄子？
私：前田家三宝物の一つ。信長の名物狩りで召し上げられ、それが秀吉に渡る。「秀頼を頼む」と、死の前年に秀吉は利家に富士茄子を譲る。
●古九谷を追う 加賀は信長・利休の理想郷であったのか(幻冬舎）抜粋
