古九谷を追う&古九谷を残す

週1くらいの更新になります

フロイス(5)信長の目を開けるキリスト教の「人間観」

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N:このところ、話のインパクトが弱いような気がします。これくらいのインパクトでは信長の目は開きません。フロイスの何がいったい信長の目を開けたのでしょうか?

私:信長はフロイスの知性を愛し、フロイスとの議論を好んだ。信長の冗談めかした直球の質問にフロイスは、冗談めかして、デッドボールを避けて倒れ込んだりした。

N:信長は訊き上手でもあり、聞き上手でもあったのですね。

私:信長はついにフロイスの本音を聞き出した。そしてキリスト教の凄まじい「人間観」に驚いた。信長は「人間ではない人間の存在」を学んだのだ。

N:人間ではない人間の存在とは? 

私:一つは人間は白人のみ。一つはキリスト教徒にあらずんば人にあらず。つまり有色人種は人間ではなく「奴隷」で、異教徒は「悪魔」で殲滅せよ。

N:これですね。信長の目を開けたのは!

私:信長はキリスト教の凄まじい「人間観」に驚く。そして信長はキリスト教による新国家造りを決断する。しかし、それと同時に、彼らへの対抗策・防衛策を発案、実行する。

N:信長はフロイスから着想を得て、フロイスの「人間観」に基づき、日本を新しい国家に造り変えようと決意したのですね。

私:そうだね。信長は日本を封建制から資本主義国家へ誘うために、「富国強兵」・「殖産興業」の旗を立てたのだ。

N:江戸をぶっ飛ばしていきなり明治新政府みたいですね。 

私:信長はフロイスから西洋文明を学ぶ。関心の中心はつねにキリスト教であり、帝国主義だった。信長にあるのは、富国強兵の「強兵」ではなく、富国強兵の「富国」なのだ。「楽市楽座」、「関所の廃止」など、先にも述べた信長の経済政策はすべて、最終的には、彼らキリスト教帝国主義への対抗策・防衛策なのだ。

 

●古九谷を追う 加賀は信長・利休の理想郷であったのか(幻冬舎)抜粋