利常と「古九谷」
N:しかし「茶」と「古九谷」の結びつきが……。
私:「茶」の世界の裾野は広い。手仕事の世界は「美」の世界だ。「湯釜」、「箔」、「漆器」、「友禅」、「縫」、「竹細工」、「表具」そして「和菓子」。金沢の和菓子は降嫁する珠姫のために「5色生菓子」を創作したのが始まりとされる。遠州の書「長生殿」が彫り刻まれている落雁(森八)にも利常の「茶」への傾倒を感じる。
N:茶室とその作事・作庭もそうでしょう?
私:利常は芸術を「利休の茶事の世界の完遂」と捉えていた。空間と時間を演出し、招いた客人を楽しませる。その行為自体を芸術と捉えていた。
N:客人を楽しませる?
私:楽しませることが大切で、利常は自分の価値観をもてなしで伝えようとした。伝われば大きな満足が得られる。そうそう、利常の灰塚は茶の香りが漂う。利常自身が指定した茶畑(石川県小松市)の一角にある。じゃあ、この辺でトイレタイムとしよう。
- 古九谷を追う 加賀は信長・利休の理想郷であったのか(幻冬舎)抜粋