古九谷を追う&古九谷を残す

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「色のハーモニー」 「古九谷」は理屈抜き

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私:ところで海部公子氏(硲伊之助の後継者)は「理屈抜き」をよく口にする。「硲伊之助の油絵作品は色の調和を求めるものであり、観念によって制作したものではない。色彩感覚に導かれ描かれたもので、何やかんやと『批評家』が裏読み的解説をする必要のないものだ」。「理解力ということで言えば、それは良いものを良いものと感じる力ということになろうか。おそらく瞬時に理屈ではなく、その作品全体の色を感じ、さらに描線を含む筆触がどの程度に対象の生命感を把えているのかを見る力と言えよう」。

N:色の調和を求めるとは?

私:色と色がハーモニーするし、色と形もハーモニーする。「古九谷」は理屈抜きだ。

N:理屈抜きとは感覚的ということですか?。

私:そうだね。海部氏は続けて語る。「伊之助は色の調和を愛し、色に対する感受性を育む生活を大切にした。自分を取り囲む現実を感じながら生活し、身の周りに置くものさえ無関心でいられなかった」。「日常が幸せであれば、表現も喜びに溢れる。それゆえに日常生活を大切にするし、日常生活に美の世界を持ち込む。画家は自然を細部まで観察し、生活のひとコマを即興的に描く」。

  • 古九谷を追う 加賀は信長・利休の理想郷であったのか(幻冬舎)抜粋