「色のハーモニー」と「色のヴァルール」
私:そして硲伊之助によれば、「古九谷」(色絵磁器)の2条件は「ハーモニー」と「ヴァルール」だ。ハーモニーは「色のハーモニー(色彩調和)」と使う。またヴァルールは「色のヴァルール(色彩遠近法)」と使う。
N:色にも遠近法があるのですか?
私:色の違い、色の濃淡により距離感が生まれる。ハーモニーとヴァルールが一体となって、色彩の濃淡強弱で、画面の奥行きや遠近感、そして事物の立体感や位置づけを調節する。
N:ところで硲伊之助とは?
私:松井秀喜の座右の銘で伊之助が思わぬ注目を浴びたことがある。「努力できることが才能である」。松井の父が小学校3年生の息子に毛筆で伊之助の言葉を書き贈った。それはさておき、伊之助はマティスの弟子で、画家。東京芸術大学助教授を辞して、マティスの招請で渡仏する。26歳から通算15年(4度)渡欧。67歳で九谷吸坂窯(石川県加賀市)を築き、硲三彩亭と名乗る。81歳没。戦後初のゴッホ展やマティス展やピカソ展はマティスと伊之助の絆が開催を成功させた。また『ゴッホの手紙』(岩波書店)も翻訳している。
N:「古九谷」で「色のハーモニー」屈指の作品はどれですか?
私:「布袋正式名称」(県美)と「畦道」と「翡翠図平鉢」(東京国立博物館。以下東博)。
N:では「色のヴァルール」屈指の作品は?
私:「牡丹蝶文捻大皿」(東博)。
- 古九谷を追う 加賀は信長・利休の理想郷であったのか(幻冬舎)抜粋