古九谷を追う&古九谷を残す

週1くらいの更新になります

(2)蝶は飛んでいるか?

 

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私:ところで武腰潤氏による「東博」の「牡丹」の作品解説があった。この作品をみたことがきっかけとなり、「古九谷」作家になったとの驚きの告白があった。まず線の話があり、職人の線ではなく画家の線(武士の線)だとの指摘がある。その後、蝶の「位置」の話になり、赤の砥草に蝶は「直角」で、「これこそが写生で、画家の仕事です」との解説がある。が、しかし蝶の「動き」の話はなかった。

N:蝶の動きの話とは?

私:北斎や硲伊之助の作品は蝶が動いている。しかし「東博」の蝶は動いていない。

N:へえ。動きの話は、結局、どうなりましたか? 武腰氏に訊いたでしょう?

私:「残念です。しかし牡丹が風で動いています」。

N:画家はどうやって動く蝶を写生しているのでしょうかね? 石膏は動きませんが、蝶は動きますからね。

私:硲紘一硲氏(九谷焼作家・硲伊之助美術館館長)に伊之助の蝶を訊いた。「虫籠に入れてスケッチしていた」そうだ。

N:北斎もそうしたんでしょうか? 

私:じつは伊之助の蝶は「動いて」いるが、「飛んで」いるとまではいえない。そのことが引っかかっていたが、虫籠では蝶は飛べなかったのだ。北斎の「波」を見れば、蝶を飛ばすことなど版画では朝飯前だっただろうが、北斎でも磁器となるとどうだろうか?

N:ゴッホ

  • 古九谷を追う 加賀は信長・利休の理想郷であったのか(幻冬舎)抜粋