古九谷を追う&古九谷を残す

週1くらいの更新になります

二つの「牡丹」(3)3次元(立体)化

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私:作蔵君、これから始まるこの話が「古九谷」の話の山場だ。さて「東博」の「牡丹」は画面から緊張感が漂う。それは武士の線から来ているのだろうか? しかし、それだけではない気がする。

N:何からきていると?

私:点や線だけではないし、面だけでもない。たぶん立体だ。緊張感が漂うのは絵が立体化(3次元化)しているからではないか。

N:もう少し、具体的に説明できませんか?

私:「色のヴァルール」が成功していて、それゆえ牡丹も葉も立体的(3次元的)なの-だ。

N:ふと思ったのですが、「古九谷」にも図案化されたものが多いのは、結局、『八種画譜』を3次元化ができなかったからではないですか?

私:そうだよ。作蔵君、その通り! そのまま真似れば2次元(画譜)から2次元(古九谷)への移行にしかならない。その程度の真似では作品は失敗するからなんだよ。

N:成功するには?

私:画譜を3次元にする。その修練を積むと『八種画譜』から「古九谷」への道が完成する。いや、そもそも素描力を高めないと、どうしようもないなあ。

N:しかし「古九谷」にはパターン化された図案が多いですね。

私:それらは利政人脈の手ではない。

N:え!

私:絵画的に成功していないものは「鷹峰」のものであろうはずはない。

  • 古九谷を追う 加賀は信長・利休の理想郷であったのか(幻冬舎)抜粋