(2)茶人 古田織部
私:さて、茶人の織部を語ろう。織部は漫画『へうげもの』(山田芳裕)で一躍世間に知られるところとなる。作蔵君は読んだかな?
N:はい。織部に限らずどの登場人物も欲があり、人間臭くて、司馬遼太郎の『国盗り物語』のようでした。
私:ほお。利休の茶の湯は織部へと受け継がれた。織部もまた権力者家康から切腹を命ぜられ殉死する。しかし織部の織部焼はやがて「古九谷」の緑釉に蘇る。
N:緑釉に蘇る?
私:織部の緑釉は抹茶の色でもあり、のだ。織部の緑釉は「古九谷」の「青手(塗埋手)」として蘇る。
N:それならあの歪んだ形もシャレコウベなのでしょうか?
私:そうだね。馬に蹴られた髑髏かもしれないなあ。そうとでも思わなければ、あの斬新で奇抜な形はわからないが、南蛮の匂いがする。
N:織部と信長は接点がありましたか?
私:16歳で織田信長の桶狭間の戦いに使番として仕官して、以来22年間信長に仕えた。
N:織部と利休の接点は?
私:信長死後、織部は利休の弟子になる。利休没後の25年間、織部は茶の湯界に君臨した。
N:利常とは?
私:接点はない。織部は「傾奇者」で、「破調の美」とかいって器を故意に割る。そしてそれを継ぎ合わせる。利常と接点があればおもしろかったのに残念だ。
N:秀吉とは?
私:利休死後、秀吉に命じられて、織部は茶道を武家の儀礼用に変える。それゆえ織部の茶は利休の茶と大きく異ることになる。
N:家康とは?
私:豊臣氏(大坂の陣)との内通の嫌疑で、切腹(殉死)に追い込まれる。
N:織部はキリシタンだったとしても利休ほどのインパクトはありません。
私:利休があまりにも偉大だったため、織部が利休の二番煎じに見えるのだろう。
古九谷を追う 加賀は信長・利休の理想郷であったのか(幻冬舎)抜粋