古九谷を追う&古九谷を残す

週1くらいの更新になります

感想 その1

 

 ●戦国期バサラで生き抜いた前田家は、安定期に入ると陣羽織に代わるものとしての「古九谷」を産んだ。

「古九谷」の部分が多ければさらに良かったが、信長の後継者としての前田家と、安定期を生き抜く美術国家としての代表格「古九谷」を生み出す前田家の生きざまが感じられた。

 

●古九谷が生まれた謎を織田信長からスタートして考えていく

戦国時代の歴史の知識が少ない人にはやや読みづらいかもしれないが、それでもこれを読めば、歴史と文化の深い関連に興味が出てくるかもしれない。書き方も普通の歴史小説と違って教室で講義を受けているというよりはセミナーを受講している感じ。多少でも古九谷に興味のある人は必読でしょう。

 

●著者は選択を間違えた

信長本として売り出すべきだった。
次からつぎへと驚きの展開をみせるが、いちいち納得がいくのがこの本の特徴。
斬新な対話形式のために、わかりやすかった。
経歴を見ると、塾の先生。
道理でわかりやすいはずだ。

この著者は「古九谷」が深く好きなのだろう。
どうしても『「古九谷」の中に信長を見た』ことを書かなければならないと考えた著者の切なる気持ちに感動した。

 

●著者の想像力の大きさが際立つ。

 信長・利休の野心的な見直し論に、「古九谷」を絡ませ、全体を通して、前田三代の文化立国をとても大きなスケールの歴史観で論じている。

信長と「古九谷」がどう結びつくのか?
それが本書の一番秀逸なところだ。

 

●とにかく刺激的でおもしろい

そのおもしろさは、視点の複眼性、立体性にある。タイトルの「古九谷を追う」から信長は連想できなかったが、信長、利家、前田三代からの視点、利常と茶道からの視点が、利常と古九谷へと連なっていき、絡み合っていく様は、まさにミステリー小説を読むが如く。 

 

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