信長は初期化する
まず初期化から始めます。
信長は人の話を聞くときは、己を初期化して、聞きました。
己を初期化してまで話を聞きたいと思わない輩とは、信長は口を聞こうともしませんでした。
信長はいいとこ取りをしようとして、人の話を聞こうとはしませんでした。
いいとこ取りはいけません。いいとこ取りとはつまみ喰いです。信長はつまみ喰いはしませんし、つまみ喰いを許しません。
バージョンアップなどしないのです。
信長はフロイスの話を、自分を初期化して聞きました。
信長は訊き上手でもあり、聞き上手でもあったのです
初期化の対義語はバージョンアップです。
信長はバージョンアップを許しません。バージョンアップはつまみ喰いで、いいとこ取りだからです。
フロイスの本音を聞き出せたのも、信長が自分を初期化して、フロイスの話を聞いたからです。そして、キリスト教の凄まじい「人間観」を知ったのです。つまり、白人のみが人間であり、キリスト教徒のみが人間であり、しかし、有色人種は人間ではなく奴隷であり、異教徒は悪魔ゆえに殲滅せよ……。
信長はそんな彼らへの対抗策を講じました。日本を封建制から資本主義国家へ誘い、「富国強兵」・「殖産興業」の旗を立てました。それが「天下布武」・「永楽通宝」の旗印で、ここは信長の圧巻なところです。本文で述べた通りです。
- 古九谷を追う 加賀は信長・利休の理想郷であったのか(幻冬舎)抜粋