はじめに その3 信長と利休 知られざる利休
ところで、信長の髑髏盃はご存知ですか?
浅井久政・長政親子と朝倉義景の三つの頭蓋骨に金箔が施されています。
その盃で信長は酒を飲む……。
大河ドラマではおなじみの場面ですが、その髑髏杯こそが、じつは、利休の茶碗の源泉なのです。
利休の茶は戦国の荒ぶる魂を鎮めます。
陣幕での茶会は「一期一会」です。茶会は必勝を誓いもしますが、この世での「別れの儀式」でもあり、「死への旅立ちの儀式」でもあります。
本作品は、利休が「陣幕の茶」を、イエス・キリストの「最期の晩餐」と見立てることから話は進みます。
利休はあの狭くて暗い茶室をなぜつくったのか? その謎に迫りました。
それはイエス・キリストが囚われていた「牢獄」を利休の「茶室」と見立てたからです。
茶室は牢獄ゆえに狭く、牢獄ゆえに「にじり口」があり、そして格子の入った小さな窓は牢獄の鉄格子です。そして読者の誰もを驚きの利休の世界に誘いこみます。
- 古九谷を追う 加賀は信長・利休の理想郷であったのか(幻冬舎)抜粋