信長の経済論(3)勝っても紙くずを乗り越える
私:作蔵君、「西郷札」を知ってるかい? 西南戦争のとき鹿児島で発行されたお札だがね。西郷隆盛が負けたので、西郷札は「負けて紙くず」となる。一方新政府は日本初肖像画入り「神功皇后札」を発行するが、新政府は戦争には勝ったが、しかし神功皇后札は「勝っても紙くず」となる。
N:え! 勝っても紙くず?
私:戦争は甘くない。経済原理は戦争を必ず罰する。アメリカの南北戦争も同じだ。負けた南も、勝った北も紙くずになり、そして北にユダヤ資本が……。
N:またユダヤ資本ですか?
私:とめどない通貨発行でインフレが起きる。そのインフレを退治するために発行通貨を使えなくする。1945年、日本は戦争に負ける。そして「負けて紙くず」が起きる。
N:信長は?
私:戦争に負けない。勝つ。勝つから新しい領土が増える。そこに「織田の永楽通宝」(贋金)を流す。新しい織田の経済圏が誕生する。贋金の「いろは」は戦争に勝ち、領土を拡大させることだ。そうでなければ贋金作りは首を締めるだけになる。
N:そうかあ。それで信長は西へ西へと宋銭の経済圏に侵攻するのですね。
私:そうだね。宋銭が駆逐それが三つめの謎(永楽通宝の流通範囲の謎)の答えだな。
N:ところで信長はそもそも贋金で何を買ったのですか?
私:贋金で金銀を買った。
N:え! 火薬ではないの?
私:違う。金銀を贋金で買う。その贋金で買った金銀で火薬を買う。一方信玄や謙信は本物の金銀で明銭の「永楽通宝」と火薬を買う。
N:西国大名は娘50人と火薬1樽とを交換したのでしょう? 早い話が人身売買 をして火薬を手にいれてきたわけでしょう。しかし、信長は娘を売り飛ばさず、贋金をつくり、贋金で金銀を買い、その金銀で火薬を買うわけでしょう。なんかすごいなあ。
●古九谷を追う 加賀は信長・利休の理想郷であったのか(幻冬舎)抜粋