古九谷を追う&古九谷を残す

週1くらいの更新になります

新古九谷論

最後に問う 二つの「牡丹」(1)ハーモニーとヴァルール

私:さてここからは2枚の牡丹を描いた「古九谷」きっての大名品を対比させながら話を進めよう。「亀甲牡丹蝶文大皿」(重文・「古九谷」No.1との評価もある)と「牡丹蝶文捻大皿」(東京国立博物館。以下東博)。 N:「色のハーモニー」と「色のヴァルール」…

(3)鷹峰(琳派)

私:ところで、先ごろ、東京オリンピック・パラリンピックの記念硬貨で「風神雷神図」が話題になった。また俵屋宗達・尾形光琳・酒井抱一「風神雷神図屏風」3作品が一堂に会する展覧会も人気だ。 N:宗達・光琳の2作品はみました。 私:光琳の画法は宗達を…

(2)牡丹

私:斎藤菊太郎(古九谷新論)によれば、九谷の画工は『八種画譜』の使い方が上手という。「色絵古九谷の花鳥図は、初期柿右衛門の赤絵花鳥図が焼かれた年次からはやや遅れて、雁行して焼成されたであろうことは想像に難くありません。色絵古九谷の赤絵技法…

『八種画譜』から「古九谷」へと至る道(1) 素描

私:いよいよ話は佳境にはいってきたな。『八種画譜』から「古九谷」へと至る道についてまとめて話そうとするか。テーマは『八種画譜』から着想を得て、「古九谷」の名品がつくれるのか?、だ。 N:『八種画譜』って何ですか? 私:中国でできた絵手本だ。「…

「古九谷」の縁

私:さて今度は「古九谷」の縁の話をしよう。そもそも「古九谷」には総絵のものと縁のあるものとがある。縁のある皿は、江戸時代の流行りで、とても人気があり、歌人が一首歌いたくなる中国風の「古九谷」が好まれた。 N:作家はどういう場合に縁をつけるの…

「古九谷」の背景の文様

私:次は背景の文様に移ろう。「古九谷」には一面を黄色や緑色で塗り埋めた作品がある。それを「青手(塗埋手)」という。それらには必ず背景に文様がある。文様がなければ作品が締まらない。 N:文様? 私:地文様ともいう。「青手(塗埋手)」には目が喜ぶ…

「古九谷」の生地の形状

私:話を色から形に移そう。形のバリエーションは豊富でじつにたのしい。 N:どんな形のものがあるのですか? 私:ふくべ(ひょうたん型)。おめでたい形とされ、秀吉の馬印の千成瓢箪が有名だが、そもそもひょうたんには種が多く、子孫繁栄の意味がある。他…

「古九谷」の生地の色

私:次は「古九谷」の生地を語ろう。「古九谷」の生地は白っぽいし、青っぽいし、鼠っぽい。つまり真っ白ではない。 N:なんともいえない生地の色です。 私:その色の生地を「鼠生地」と呼ぶ。鼠生地は「古九谷」の釉薬に深みや透明感を与えている。その鼠生…

「色のハーモニー」と「色のヴァルール」

私:そして硲伊之助によれば、「古九谷」(色絵磁器)の2条件は「ハーモニー」と「ヴァルール」だ。ハーモニーは「色のハーモニー(色彩調和)」と使う。またヴァルールは「色のヴァルール(色彩遠近法)」と使う。 N:色にも遠近法があるのですか? 私:色…

「色のハーモニー」 「古九谷」は理屈抜き

私:ところで海部公子氏(硲伊之助の後継者)は「理屈抜き」をよく口にする。「硲伊之助の油絵作品は色の調和を求めるものであり、観念によって制作したものではない。色彩感覚に導かれ描かれたもので、何やかんやと『批評家』が裏読み的解説をする必要のな…

九谷五彩

N:おはようございます。今日は最終日で、「古九谷」ですね。 私:おはよう。そうだね、芸術的なアプローチと歴史的なアプローチ、二つのアプローチで「古九谷」に迫ろう。そして「古九谷」はゴッホやマティスのはるか200年以上も前に誕生した日本が世界に誇…

3日目 新「古九谷」論 「古九谷」とは何か?

本作品は、古九谷の謎を解き明かしていくところに眼目がありますので、本章(3日目)が結論になります。古九谷という「謎の多い焼き物」はいったいどのように誕生し、ほんの20年ほどの歴史を残してあっさり消えてしまったのはなぜか。 陶芸愛好家のみならず…