新信長論 信長と利家
私:さてここからは信長の戦争論、経済論へと話を進めるが、信長は誤解に包まれている。まず鉄砲神話の誤解から始めよう。信長は鉄砲で天下を取ったとよく言われるが、事実は逆で、鉄砲が信長の天下取りを大きく阻んだのだ。 N:そうなのですか? 私:決定的…
私:さてもう一人の家庭教師(傅役)の平手政秀について語ろう。政秀は信秀の名代で朝廷に4000貫文を寄進したり、斎藤道三の娘(濃姫)との婚儀も整えたりしている。しかし信秀の葬儀で信長が仏前に抹香を投げつけるに及び政秀は諫死した……。 N:政秀の諫死…
私:ところで信長には2人の家庭教師がいた。沢彦と傅役の平手政秀だ。 N:信長に家庭教師がですか? 私:いやしくも信長は30万石の家督を継ぐ。帝王学を教える家庭教師がいるのがむしろ当然だ。沢彦は天道思想を信長に刷り込んだ。そもそも織田家の先祖は越…
私:「天下布武」にはさらに別の意味がある。信長は「天下布武」のスローガンを掲げ、天下に人材を募集したんだ。「天下布武」には織田家の人材不足が背景にある。 N:え! 私:「天下布武」に共鳴して織田家に有能な人材(明智光秀や足利義昭)が集まってき…
私:次は本丸の「天下布武」に入ろう。「天下布武」には誤解がある。「天下布武」は「武力で天下を治める」の意味ではない。だって信長の書状に憤慨した戦国武将は誰一人として伝わっていないのだから。信長から書状が届く。「天下布武」の印判がつく。謙信…
私:さて桶狭間に急ごう。ここでは今川義元からの戦利品、刀の話をしよう。その名を「義元左文字」という。刀は合戦のたびに信長の腰にあり、本能寺へも携える。変後、秀吉に渡り、秀頼、家康へ。そして家康は大坂の陣で佩くんだ。 N:信長の刀を、豊臣を滅…
私:ところで竹中半兵衛を知ってるよね? N:秀吉の軍師で、知略、神のごとしでしょう? 私:信秀の知略は竹中半兵衛以上なんだ。 N:そうなの? 半兵衛の知略といえば、難攻不落の稲葉山城をたった16名で、しかも、調略で乗っ取る。『国盗り物語』(司馬遼…
N:さすがゼニ経済の織田三代ですね。打ち出の小槌(資金源)の確保ですね。桶狭間の必勝祈願は熱田神宮でしたが、熱田は湊だったのですね。.でも津島湊の話は初めてです。しかしこの話、信長の堺の直轄と瓜二つですね。 私:信長が安土城を提灯でライトアッ…
私:さていよいよ本丸の織田信長の話に入ろう。まず織田三代から始めよう。織田三代とは信定(祖父)―信秀(父)―信長で、信定は10万石で、信秀は30万石だ。 N:信長は石高でも恵まれていますね。 私:そして信長は信定・信秀のゼニ経済(金銀発想)を継承す…
私:ところで『黄金の日本史』(加藤廣)によると、関ヶ原の前、家康の金保有は1トンだ。しかし関ヶ原の後、100トンを伏見城から奪い、大坂の陣の後、200トンを大坂城から奪うんだぜ。 N:豊臣家には300トンもの金があったのですか? 私:そうだよ…
私:しかし、この石高議論がまかり通るところが、じつはおかしいなところだ。なぜかといえば、石高発想は信長の発想ではなく、家康の発想だからだ。われわれは家康発想に毒されているともいえる。 N:あれ? でもさっきは利家と秀吉の能力差を石高で判断して…
N:では秀吉政権下での利家評定は? 私:利家は83万石。それでも豊臣政権の五大老中、なんと、下から2番目だ。 N:え! 私:石高1番は家康の250万石で、毛利輝元と上杉景勝は120万石。1番下は宇喜多秀家57万石だな。石高の差から考えても、前田単独…
N:がぜん気になり始めました。神(信長)は利家の能力をどう評価していたのでしょうか? 私:信長は能力主義で、大胆な人材登用をする。秀吉が草履取りから天下人へなるくらいのね。そして信長は能力とは石高(給与)と考えていた。石高こそが信長の人事評…
私:前田家の信長への崇敬はこの程度では済まない。利家の遺言状の話があるんだ。遺言状には信長の名前が数度出てくるが、秀吉の名は一切ないんだ。 N:秀吉にあれほど世話になっているのにですか? 私:信長の戦法を真似しろ。敵地に踏み込め。自国に侵入は…
私:次は織田信長の「遺骨」の話をしようかあ。本能寺の変当日、利長・永姫夫妻は信長(父)に会うために本能寺に向かっていた。ところが瀬田の唐橋(京の入口)で信長の死を知る。利長はただちに同行の家臣を本能寺に走らせた。 N:だから焼け跡で信長の骨…
N:利家と信長の関係をもっと知りたくなりました。 私:そう? ご要望に応えよう。まず一つ目。利家の嫡男は利「長」。利長の長は信長の長だ。二つ目。その利長の嫁は信長の娘(永姫・玉泉院)。金沢城の玉泉丸庭園は邸宅跡地だ。三つ目。玉泉院の墓所(野田…
N:先生、お久しぶりです。冬休みで帰ってきました。石川はこんなに寒いのですね。 私:そんなに寒いかな? ホットでいい? N:はい。ところで、先生、今、何してるんですか? 私:「古九谷」の原稿を書いている。 N:へえ。どんなことを書いているんですか…
『国盗り物語』(司馬遼太郎)、『織田信長』(山岡荘八) 図 2 によって植え付けられたイメージはなかなか払拭できま せんが、本章(第1日目)はこうした織田信長像からかな りかけ離れています。小説ではなく、一種の論考のよう な内容を持っている本作品…
秘められた織田信長、千利休、前田三代の精神性に迫る 目次 忘却の磁器に見る戦国時代の残影。戦国時代末期、織田信長という日本人離れした武将が登場したことは奇跡としか言いようがなく、その信長の残した文化面の遺産を利家、利長、利常が見事に繋いだこ…