古九谷を追う&古九谷を残す

週1くらいの更新になります

信長の経済論(1)大判・小判

私:さてここからは信長の「経済論」を語ろう。次の三つの謎を語ることで、信長の経済論の骨格を浮かび上がらせる。一つ目は天下人信長の大判・小判がない謎。二つ目は織田の旗印が「永楽通宝」の謎。三つ目が永楽通宝の流通範囲の謎。 N:大判、小判といえ…

戦争論の誤解 兵農分離 ホームレスに顔を背ける織田家の面々

N:次の誤解は? 私:「兵農分離」だな。兵農分離ではなく、信長の戦争論では「傭兵」という。信長は、津島湊と熱田湊で、海外の「傭兵」の情報を入手していた。「傭兵」に応募したのは喰いっぱぐれた次男、3男(利家は4男)。はっきり言えばホームレスだ…

鉄砲の誤解(3)鉄砲が宗教に与えた影響

私:ところで、作蔵君、信長は鉄砲集団の指導を宣教師ヴァリニャーノが連れてきた外国人に任せていたことを知っているかい? ところで、鉄砲は戦争のありようを変えたが、鉄砲の影響が宗教面から語られることは少ないね。しかしひとの死因が鉄砲で変化してい…

鉄砲の誤解(2)鉄砲量産と火薬

私:次はもう一つの鉄砲の誤解(鉄砲量産と火薬)を語ろう。鉄砲は日本に伝来するや、翌年には国産化に成功して、性能はほどなく南蛮を超える。そして戦国末期には海外に輸出するまでになるんだ。しかし南蛮勢の真の狙いはできるだけ多くの鉄砲を日本につく…

鉄砲の誤解(1) 信玄、謙信、石山本願寺が立ちはだかる

私:さてここからは信長の戦争論、経済論へと話を進めるが、信長は誤解に包まれている。まず鉄砲神話の誤解から始めよう。信長は鉄砲で天下を取ったとよく言われるが、事実は逆で、鉄砲が信長の天下取りを大きく阻んだのだ。 N:そうなのですか? 私:決定的…

天下布武(4) 2人の家庭教師② 平手政秀

私:さてもう一人の家庭教師(傅役)の平手政秀について語ろう。政秀は信秀の名代で朝廷に4000貫文を寄進したり、斎藤道三の娘(濃姫)との婚儀も整えたりしている。しかし信秀の葬儀で信長が仏前に抹香を投げつけるに及び政秀は諫死した……。 N:政秀の諫死…

天下布武(3)2人の家庭教師① 沢彦

私:ところで信長には2人の家庭教師がいた。沢彦と傅役の平手政秀だ。 N:信長に家庭教師がですか? 私:いやしくも信長は30万石の家督を継ぐ。帝王学を教える家庭教師がいるのがむしろ当然だ。沢彦は天道思想を信長に刷り込んだ。そもそも織田家の先祖は越…

天下布武(2) 人材募集

私:「天下布武」にはさらに別の意味がある。信長は「天下布武」のスローガンを掲げ、天下に人材を募集したんだ。「天下布武」には織田家の人材不足が背景にある。 N:え! 私:「天下布武」に共鳴して織田家に有能な人材(明智光秀や足利義昭)が集まってき…

天下布武(1)「武」は「徳」

私:次は本丸の「天下布武」に入ろう。「天下布武」には誤解がある。「天下布武」は「武力で天下を治める」の意味ではない。だって信長の書状に憤慨した戦国武将は誰一人として伝わっていないのだから。信長から書状が届く。「天下布武」の印判がつく。謙信…

我が青春の桶狭間 義元左文字

私:さて桶狭間に急ごう。ここでは今川義元からの戦利品、刀の話をしよう。その名を「義元左文字」という。刀は合戦のたびに信長の腰にあり、本能寺へも携える。変後、秀吉に渡り、秀頼、家康へ。そして家康は大坂の陣で佩くんだ。 N:信長の刀を、豊臣を滅…

織田三代 信秀の知略は竹中半兵衛を凌ぐ

私:ところで竹中半兵衛を知ってるよね? N:秀吉の軍師で、知略、神のごとしでしょう? 私:信秀の知略は竹中半兵衛以上なんだ。 N:そうなの? 半兵衛の知略といえば、難攻不落の稲葉山城をたった16名で、しかも、調略で乗っ取る。『国盗り物語』(司馬遼…

織田三代の聖地 熱田と津島

N:さすがゼニ経済の織田三代ですね。打ち出の小槌(資金源)の確保ですね。桶狭間の必勝祈願は熱田神宮でしたが、熱田は湊だったのですね。.でも津島湊の話は初めてです。しかしこの話、信長の堺の直轄と瓜二つですね。 私:信長が安土城を提灯でライトアッ…

織田三代 信長は信定・信秀のゼニの経済を継承する

私:さていよいよ本丸の織田信長の話に入ろう。まず織田三代から始めよう。織田三代とは信定(祖父)―信秀(父)―信長で、信定は10万石で、信秀は30万石だ。 N:信長は石高でも恵まれていますね。 私:そして信長は信定・信秀のゼニ経済(金銀発想)を継承す…

金保有 利家0.3トン  vs 家康1トン vs 秀吉300トン

私:ところで『黄金の日本史』(加藤廣)によると、関ヶ原の前、家康の金保有は1トンだ。しかし関ヶ原の後、100トンを伏見城から奪い、大坂の陣の後、200トンを大坂城から奪うんだぜ。 N:豊臣家には300トンもの金があったのですか? 私:そうだよ…

信長発想 vs 家康発想 金銀 vs 石高

私:しかし、この石高議論がまかり通るところが、じつはおかしいなところだ。なぜかといえば、石高発想は信長の発想ではなく、家康の発想だからだ。われわれは家康発想に毒されているともいえる。 N:あれ? でもさっきは利家と秀吉の能力差を石高で判断して…

秀吉の利家評定 五大老で下から2番目

N:では秀吉政権下での利家評定は? 私:利家は83万石。それでも豊臣政権の五大老中、なんと、下から2番目だ。 N:え! 私:石高1番は家康の250万石で、毛利輝元と上杉景勝は120万石。1番下は宇喜多秀家57万石だな。石高の差から考えても、前田単独…

信長の利家評定 秀吉「頭脳」vs 利家「筋肉」

N:がぜん気になり始めました。神(信長)は利家の能力をどう評価していたのでしょうか? 私:信長は能力主義で、大胆な人材登用をする。秀吉が草履取りから天下人へなるくらいのね。そして信長は能力とは石高(給与)と考えていた。石高こそが信長の人事評…

利家の遺言状に信長の名があるのに秀吉の名はない

私:前田家の信長への崇敬はこの程度では済まない。利家の遺言状の話があるんだ。遺言状には信長の名前が数度出てくるが、秀吉の名は一切ないんだ。 N:秀吉にあれほど世話になっているのにですか? 私:信長の戦法を真似しろ。敵地に踏み込め。自国に侵入は…

遺骨は高岡と金沢にある 

私:次は織田信長の「遺骨」の話をしようかあ。本能寺の変当日、利長・永姫夫妻は信長(父)に会うために本能寺に向かっていた。ところが瀬田の唐橋(京の入口)で信長の死を知る。利長はただちに同行の家臣を本能寺に走らせた。 N:だから焼け跡で信長の骨…

金沢には安土城が建っていた

N:利家と信長の関係をもっと知りたくなりました。 私:そう? ご要望に応えよう。まず一つ目。利家の嫡男は利「長」。利長の長は信長の長だ。二つ目。その利長の嫁は信長の娘(永姫・玉泉院)。金沢城の玉泉丸庭園は邸宅跡地だ。三つ目。玉泉院の墓所(野田…

利家は信長を神と崇めていた

N:先生、お久しぶりです。冬休みで帰ってきました。石川はこんなに寒いのですね。 私:そんなに寒いかな? ホットでいい? N:はい。ところで、先生、今、何してるんですか? 私:「古九谷」の原稿を書いている。 N:へえ。どんなことを書いているんですか…

◎ 第1日目 新信長論 利家と信長

『国盗り物語』(司馬遼太郎)、『織田信長』(山岡荘八) 図 2 によって植え付けられたイメージはなかなか払拭できま せんが、本章(第1日目)はこうした織田信長像からかな りかけ離れています。小説ではなく、一種の論考のよう な内容を持っている本作品…

◎本文

私(西野鉄郎)は高校生に英語を教えています。N(西野作蔵)君は私の塾のOBです。上智大学の2年生で、ロシア語を専攻しています。帰省中の冬休みのある日、私たちは茶房古九谷(九谷焼美術館内)で会いました。話は弾み、3日連続で、「織田信長と古九谷」に…

はじめに その最終回 古九谷──信長と利休の「髑髏盃」を追う

本作品の結論部分です。古九谷という「謎の多い焼き物」はいったいどのように誕生し、ほんの20年ほどの歴史を残してあっさり消えてしまったのはなぜか。人気のある戦国末期の諸相をからめながら、信長と利休の「髑髏盃」を追い、「古九谷」には信長と利休の…

はじめに その4 城マニアにも読んでほしい

話は変わりますが、本文では、安土城(信長)、金沢城(利家)を取り上げました。「はじめに」では安土城を取り上げましょう。 これは城マニアへの挑戦状でもあるのです。海抜200mの安土「山」にあえて信長が安土城をつくった点です。 世は平城の時代になっ…

はじめに その3 信長と利休 知られざる利休

ところで、信長の髑髏盃はご存知ですか? 浅井久政・長政親子と朝倉義景の三つの頭蓋骨に金箔が施されています。 その盃で信長は酒を飲む……。 大河ドラマではおなじみの場面ですが、その髑髏杯こそが、じつは、利休の茶碗の源泉なのです。 利休の茶は戦国の…

はじめに その2 前田利家は信長に心酔していた

信長崇拝と言えば、前田三代、とくに利家の信長崇拝も驚くばかりです。 利家の遺言状には信長の名前はありますが、秀吉の名前はありません。その遺言状には信長の名前が数度も出てくるのです。 じつは利家は信長と男色関係にありました。一度契れば、生死を…

はじめに その1 信長は99%の欠点を1%の長所がすべて補っている

本作品は論考ではありますが、「歴史ミステリー」の趣きがあります。そして読み進めると信長の人間的な魅力に触れることができ、心が揺さぶられることでしょう。 信長は99%の欠点を1%の長所がすべて補っている 99%の欠点を補う1%の長所を持っているのが…

著者紹介

西野 鉄郎(にしの てつろう)石川県立小松高校(理数科)・上智大学外国語学部ロシア語学科卒業。鶴見和子ゼミ(社会学)OB。西野塾(英語)主宰。 人生の目標は「一生一品」の「鉄郎饅頭」をつくることで、鉄郎饅頭の1個目は英語教育でした(二見書房『…

本の内容紹介 秘められた織田信長、千利休、前田三代の精神性に迫る

秘められた織田信長、千利休、前田三代の精神性に迫る 目次 忘却の磁器に見る戦国時代の残影。戦国時代末期、織田信長という日本人離れした武将が登場したことは奇跡としか言いようがなく、その信長の残した文化面の遺産を利家、利長、利常が見事に繋いだこ…